出版のご案内 「患者の声を聞く」 篠原出版新社 2013年1月発行
酒巻哲夫・林田素美 編著
--------------価格:2,100円 (税込/送料別) (A5版・268ページ) 《執筆者》 ●国立大学法人群馬大学 医学部 教授 酒巻哲夫 附属病院医療情報部長、(兼)患者支援センター長 ●国立大学法人群馬大学 講師(医学部・非常勤) 大木里美 中枢性尿崩症(CDI)の会 副代表 加納貞彦 早稲田大学名誉教授 須藤美智子 (社)環境パートナーシップ会議理事・事務局長 野村美恵子 子宮平滑筋肉腫により永眠(享年60歳) 林田素美 株式会社 林田プロジェクト 代表取締役社長 |
医療の入り口に立つ学生へ- 「患者の声を聞く」 患者だからわかること
「共育」から生まれる医療の道 医療者だから生かせること この本は、群馬大学医学部が臨床実習直前の5 年生に行う「患者さんの声を聞く」 という集中講義の講師を務める4名の患者講師が自らの深層を探り、担当の教授と 3 年をかけて編集・執筆しました。 患者は、たとえ病状は一緒でも、それぞれ考えも違い環境も違います。自分たちが 背負っている日常を思って欲しい、自分たちの声を聞いて欲しいと思っています。 患者だからわかること、医療者だから生かせること。患者と医療者がともに教えあう、「共育」から新たな医療の道が開かれるのではないかと思います。 -・-・-・-・-・-・-
向き合うのは、一人の人の命。医療者が誰でもできることは、「患者の声」を聞くこと。 そこにお互いの信頼が生まれ、 情報が病の治療に役立つのではないでしょうか? 顔を見合わせて話を聞いてくれるだけで、 症状が良くなることもあるのです。 患者講師 野村美恵子(2011年1月没)
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目 次
●序章
長い病とのつき合いで思うこと 野村美恵子
●第1章
三つのエピソードから見えるコミュニケーション医療 林田素美
・共育から始まる真の医療
・くも膜下出血(脳動脈瘤破裂)
・言葉の医力・癒力
・乳腺症と乳がん
・医療者の『日常』と、患者の『非日常』
・傾聴ということ
・話すと伝える、聞くと理解するの違い
・うつ病を体験して
・第二の人生を生きる
・もう一度見直してみましょう!(チェックシート)●第2章
市民アンケートを通しての患者の声 酒巻哲夫
・市民アンケートの概要
・市民アンケートに書いていただいた意見から
・ある患者さんからの特別メッセージ
⑴ 臓器別診療の弊害 ⑵ 患者力も認めて
⑶ セカンドオピニオン 〜行き場のない患者〜
⑷ 紹介状 ⑸ 羞恥心 〜恥ずかしくて言えないこと
⑹ 処方薬への依存 ⑺ 患者のせいにする研修医
⑻ 「死」を軽く扱う医師
・コミュニケーションの問題の所在
・アンケートに書かれた「医学生へのメッセージ」
●第3章
肝臓移植、人生観、家族の気持ち 加納貞彦
・この章の説明と、基となった講義の内容
・講義前の学習資料
・2010年の講義より
・肝炎の重篤化
・いよいよ肝移植手術へ
肝臓移植後の状況1 :ウイルスや真菌に悩まされる
肝臓移植後の状況2 :腎臓をやられる
・講義後の学生のレポート
・家族の証言
●第4章
眼の障害と生き、子宮平滑筋肉腫で生涯を閉じる
-本人と家族の証言- 野村美恵子、須藤美智子
・2010年の講義より
・子宮平滑筋肉種になる
・2011年の講義より
・家族から見た姉の闘病、生活、想い
●第5章
難病患者 −その生きづらさと患者会の役割− 大木里美
・患者会とは
・生きづらさを抱える難病患者
・患者会との出合い
・患者会活動について
・患者会からみた日本の医療
・福祉制度
・医療者へのお願い ~難病・慢性疾患の患者について~
●第6章
講義「患者さんの声を聞く」を受けて 酒巻哲夫
・講義の概要
・学生の反応をアンケート結果から読み解く
・講義後のレポート
・研修医へのアンケート
執筆者より -本文
林田素美
「病気」の持ち主である「患者」は、様々な人生、様々な考えを持つ難解な相手です。でも、その難解な患者は、医療者と手を携えて病気に立ち向かいたいと思っています。心を開き、わかり合いたいと思っています。私たちは病気の判別をする機械ではなく、人に診てもらいたい。人間同士の会話をしたいと思っています。そこから、信頼が生まれるのですから…。(P33)
加納貞彦
医療者の皆さんの、ご自分の専門分野、およびそれに直接関連する分野に対する研鑽の深さには感動します。しかし、すべての関連分野の最新の進歩をフォローすることはできないのですから、ご自分の分野および直接関連する分野はしっかりカバーすると同時に、他の分野については専門家を紹介する、というチームプレイをお願いしたいと思います。(P97)
野村美恵子
お医者様が情報を提供してくださることによって、患者の側からも思い当たる情報を提供できると思います。もっと早いうちにお互いの情報を交換し合えば、より速く行動を起こせたのにと思います。もっと丁寧に患者からの情報を拾ってほしい。そして医師の情報を知らせてほしい。残念だったねというには、人一人の命は重過ぎます。大切なものだから…。(P138)
須藤美智子
……こうして、私たち家族は、姉にしてあげられることばかりを考えていました。でも、姉自身は自分のために大忙しの家族の傍で寝ていること、家族に負担をかけることが最もつらいことだったのです。家族のために彼女がしてあげられることが少なくなっていくことこそが、つらいことだったのです。私たちは結果として、クオリティ・オブ・ライフを考えていなかったのかもしれません。(P140)
大木里美
難病を発症し、失ったものだけに目を向けていた日々。難病は私の一部にすぎず、残された能力がたくさんあることを教えてくれたのは患者会でした。そして、気がつけばイキイキと患者会の活動をし、笑っている私がいます。活動を通じたくさんの人達との交流があります。辛いことの方が多い人生ですが、患者会という素晴らしい生きがいを得た私は幸せです。(P195)
酒巻哲夫
様々な病気を持つ患者さん、個別に事情を抱えた患者さん、それに応じる医療者もまた、専門領域、職種、技術が大いにちがい、その中で相互の理解を深めながら、最善を求めていくことになります。みんなちがってみんなよい、とすべてをみとめていく力が必要なのだと思います。 多くのことを教えてくれる患者さんに感謝します。(P255)